Teoriaは、ギリシア語で「観想、観照」のこと。
 知る喜び 色の楽しみ
 縦糸と横糸が出会い 新たな布が生まれる驚き
京都の小さな文化サロンで、  Teoriaの時間をお楽しみ下さい。

茶の湯のカフェゼミ・盛夏スペシャル

7月31日、川上千枝先生の茶の湯のカフェゼミ「水の恵みと日本文化」盛夏スペシャルでした。

当カフェの茶の湯のカフェゼミは、カフェ全体をひとつの茶の湯の空間にみたて、毎回季節の趣向とともに、茶の湯体験を通して日本文化をお楽しみいただくゼミです。
カフェの井戸水は、京都三名水の一とうたわれた染井と同じ水脈と言われております。この井戸水を使ったカフェならではの集いを、ということで始めました。2011年の開店以来、ほぼ休みなく隔月ごとに開き続け、この夏6年目を迎えました。
  
通常は、
①ゼミ室でのカジュアルなゼミとレクチャー
②お茶室での茶の湯体験
③洋間の円卓でディスカッション
というながれなのですが…、
今回は、盛夏の特別Vr.☆彡
「涼しい室内で野点の風情を」という趣向とさせていただきました。

まずは、ゼミ室で顔合わせとカジュアルなゼミです。
当カフェ恒例、盛夏の抹茶オンザロック
井戸水を凍らせた氷の上に直接御抹茶を入れ、上から井戸水を注ぎます。銘々ご自服でマドラーでかき混ぜて召し上がっていただきながら、店主が前座のお話をさせていただきました。お抹茶は八女の星野園《池の白》です。

カラカラとグラスをマドラーでかき混ぜる涼しい「音」もご馳走。
お菓子は俵屋吉冨「圓成まとまる」麩の焼き
干菓子 青海波と千鳥

今回時候は「大暑」しかも「土用」
ということで、「和の色シリーズ」としては「黒」をとりあげました。

土用の時期は、さまざまな慣習があります。食養生として「<う>のつくもの」「<ん>のつくもの」を食べる、という風俗も有名ですが、「黒いものを食べる」という慣習もあります。鰻、泥鰌、鮒、鯉、蜆、茄子、黒胡麻、黒豆などもよいそうです。なぜ「黒」を食べるのか?そもそも鬼門である丑の方角の守護神・玄武が五行の黒にあたるので、黒い色の物を食べることで厄除けとしたとのこと。普通に考えても、白より黒のほうが滋養がありそうですよね。ポリフェノール、ミネラルなど。ちなみに、京都ではこの時期「土用餅」をいただきますが、小豆が邪気を払うだけでなく、やはり見た目も「黒」い、です。

茶の湯における「黒」につきましては、すでに過去のカフェゼミで川上千枝先生が解説して下さいましたとおり、楽茶碗の黒が象徴する生と死、宇宙、万物と再生など、非常に重要な意味がありました。
今回は、当カフェで手織ワークショップを始めております関係で、現代手織《さをり》における「黒」の意味についても紹介しつつ、さらに「茶掛としての《さをり》」についてもお話をさせていただきました。
茶席では禅語の墨跡を掛け物とすることが多いのですが、《さをり》創始者・城みさをの「さをりは目に見える禅なのだ」という言葉、また、道元禅を愛した須田剋太画伯(1906-1990。司馬遼太郎街道をゆく』の挿絵でも有名)の《さをり》評をご紹介し、《さをり》と禅について考察致しました。

「おまけ」として、さらにちょっと涼んで頂きたく、土用と井戸水にちなみ、「真名井の女」(2015年8月15日放送NHK《京都人の密かな愉しみ 夏》挿入ドラマ その一)という怪談もご紹介いたしました。最近再放送もされたのでご覧になった方もいらっしゃいました♪


さて、
次はいよいよ円卓にお移りいただきます。


川上千枝先生の円卓でのレクチャー。


本日のテーマは「茶の湯と癒し」です。





茶の湯は、人と人との交流の場ですが、そこには単なる「おもてなし」「趣味的な愉しみ」にとどまらない、主客にとっての深い「心の癒し」の場になりうる力が潜在しています。


〇亭主の立場から
よく「亭主七分客三分」といわれますが、茶の湯の場は亭主にとっては自己表現、自己実現のプロセスでもあります。
また、点前の所作はキリスト教のミサの司式に酷似していること、茶筅通しは真言密教の「灑水しゃすい」から考えられたことなどが指摘されています。そうしてみますと、茶の湯が、心の奥深くに響き働きかけ、精神に影響することは当然とも思えます。点前の「かたち」に集中することで心が鎮まり、平安になることには、そうした理由があるようです。


〇客の立場から
「お茶は人あってこそ」茶の湯は、亭主のもてなしに客が応えることで成り立つ世界です。亭主の心づくしを、目で見、耳で聞き、香を感じ、直にふれ、舌で味わい、五感をフルにつかって感じとることが茶の湯の大きな愉しみです。
「一座建立」「感応道交」主客が出会い、互いの信頼と敬意によって場が成り立ちます。死と隣り合わせに生きた戦国武将たちが茶の湯に深く魅せられたのも、単なる流行ではなく、精神性ひいては宗教性に導かれてのことだったのかもしれません。そして内外に不安不穏が渦巻く混沌の現代にも、茶の湯の存在意義があるのではないでしょうか。

レクチャーの後は茶の湯体験です!
本日は籠点前で、円卓にて御抹茶を堪能して頂きます。
本日の室礼。
掛け物、
入口のお出迎え、茶室床の間には「涼しい水」史織作

円卓の間には、「夏の野」八寿子作

花は、ムクゲ・シュウカイドウ・ジュズサンゴ・紅白ミズヒキ・ワレモコウ・タカノハススキ

香は、「六月八日」のアロマ「ヒノキ」

本日の主菓子、俵屋吉冨の「水泉」錦玉羹

お干菓子、五郎丸屋「季節の薄氷 浴衣」てぬぐい専門店「かまわぬ」の朝顔市の柄
御抹茶は、丸久小山園「金輪」


可愛らしく上品なお籠のお道具をご覧ください!
野点は、いにしえびとの風雅なピクニックですね。

茶籠はみたてで、タイのヤンリパオで編まれたリパオバッグの持ち手、蝶番、金具をはずしたもの。
なんと、千枝先生御手ずからリメイクのお品です。


引き算の美。用の美。ミニマリズム

まことにかわいらしい。
ひょうたんの透かし
ふっくらとしたこの色このフォルム。若い作家さんの作品です。

お茶碗は古薩摩、近江八景が描かれています。
(後期滋賀大学〜石山寺〜へ非常勤で出講しております店主には、特に嬉しい絵柄♪です。)


カフェゼミ「水の恵みと日本文化」大暑スペシャル!

夏の野に、山に、瀬田川に遊ぶ心を味わって頂けましたでしょうか?

川上千枝先生、ご参加下さいました皆さま、
豊かなひとときを真にありがとうございました☆

次回茶の湯のカフェゼミは9月の予定です。どうぞお楽しみに☆